第156回日本美容外科学会学術集会レポート|"ナチュラルアピアランス"を重視したシンポジウムを取材
第156回日本美容外科学会学術集会、盛会のうちに閉幕

日本美容外科学会(JSAPS)が主催する学術集会は、美容外科・美容皮膚科領域の専門医が最新の知見や治療方針を共有する場として、毎回多くの医師が参加しています。第156回となる今回は、2026年7月4日(土)にTODA HALL & CONFERENCE TOKYOで開催され、170名を超える参加者を集めました。
学術集会会長を務めたのは、
自由が丘クリニック総院長の中北信昭先生です。会場では終日にわたり、複数のシンポジウムや特別講演が行われました。
会場で行われた多彩なセッション

当日は、「ナチュラルアピアランスを重視した眼瞼手術」をテーマにしたシンポジウムや、「美容再建外科のすすめ~原疾患の痕跡をどこまで消せるか~」と題したシンポジウム、大阪大学大学院情報学研究科・中野珠実先生による特別講演など、複数のセッションが組まれていました。
いずれも形成外科・美容外科の専門医が登壇し、それぞれの専門領域について発表を行うプログラムとなっていました。
シンポジウム3「ナチュラルアピアランスを重視したノンサージェリー治療」
本記事で中心的にレポートするのは、17時05分から行われたシンポジウム3「ナチュラルアピアランスを重視したノンサージェリー治療」です。座長・演者を務めたのは、
自由が丘クリニック理事長の古山登隆先生。
古山先生に加え、
みやた形成外科・皮ふクリニック院長の宮田成章先生、
ドクタースパ・クリニック院長の鈴木芳郎先生が演者として登壇し、切らない・低侵襲な治療について、それぞれの立場から発表を行いました。
古山登隆先生:加齢の原因を見極め、治療のゴールを決める考え方「3LTBSC」
古山先生が掲げるのは、"ナチュラルアピアランス"(自然な仕上がりを重視する考え方)です。目安となるのは「3LTBSC」。フェイスライン・横顔のEライン・頬のS字カーブという3つの「L(ライン)」、目鼻口の中心を結ぶ「T(トライアングル)」、そして全体の「B(バランス)」。加えて「SC(スキンコンディション)」、つまり肌の色調や肌質も、治療のゴールを考えるうえでの要素になるといいます。
2009年に日本でボトックスビスタが眉間のシワの治療薬として承認されたことは、「切らない治療の元年」だったと振り返っていました。眉間のシワには5つのパターンがあり、パターンに応じて注入方法を変えることで、より自然な仕上がりに近づけられるとのことです。
治療プランを立てる際は、やせる・下がる・筋肉がこわばるといった加齢の原因を見極めたうえで、ヒアルロン酸・糸リフト・ボトックスなどを組み合わせることが大切だといいます。「まず診察をして、治療のゴールを決めることがいちばん大事」という言葉が印象的でした。
講演の最後には、形成外科としての基礎を持つことの重要性や、品格のある自然な美しさを目指す「ジャパンビューティー」という考え方にも触れられました。
宮田成章先生:「Less is more」を体現する機器の使い分け
みやた形成外科・皮ふクリニックの宮田成章先生が大切にしているのは、「Less is more(少ないほうが豊か)」という考え方です。
専門とする医療機器での治療については、高周波(RF)・HIFU(高密度焦点式超音波)・超音波・レーザーなど、機器によって熱が届く深さや効き方が異なるといいます。顔の状態に応じて使い分ける様子を、「料理で茹でる・焼く・揚げるを使い分けるのと同じ」というたとえで紹介していました。
機器だけではボリュームの変化までは難しいため、ヒアルロン酸や糸リフトとの組み合わせも欠かせないとのことです。患者との付き合いは10年、20年単位になることも多いとして、老化を予防しながら長く若さを保つという長期的な視点も強調していました。
鈴木芳郎先生:糸リフトで叶える、その人らしい若返り
糸リフトを専門とする
ドクタースパ・クリニックの鈴木芳郎先生は、「若く見える=引き上がっている、ではない」という考え方を示しました。その人本来の顔立ちを保ちながら、加齢で崩れたバランスを取り戻すことこそがナチュラルアピアランスだといいます。
糸で改善できるのは、あくまでたるみ(下がり)の範囲までとのことです。ボリュームの減少などには効果が及ばないため、ヒアルロン酸・脂肪溶解注射・ボトックス・医療機器と組み合わせる必要があると話していました。
糸についても、引き上げる・支える・部分的に整える・肌の土台を作るという目的別に4種類を使い分けているといいます。1つの施術に頼らず、目的に応じて手段を選び分ける姿勢が伝わってきました。
質疑応答で見えた、切らない治療との向き合い方
質疑応答では、切らない治療が対応しにくい部位として、宮田先生から「上まぶたはどうしても改善が難しく、手術が必要になる」という説明がありました。
また、複数の治療を同じ日に行うかどうかについては治療内容によって判断が分かれるとし、鈴木先生は「糸リフトは事前の検査が必要なため、当日にはあわせて行わない」と話していました。
まとめ|"自然に仕上げる"という共通の考え方
古山先生・宮田先生・鈴木先生、3名の講演に共通していたのは、「1つの治療だけに頼らず、原因に合わせて組み合わせる」「やりすぎず、自然に仕上げる」という考え方でした。
クリニックを選ぶ際やカウンセリングの場面では、たるみやしわの原因をきちんと説明してくれるか、1つの治療だけを一方的に勧めてこないかといった点が、自分に合った治療を見つけるためのヒントになりそうです。
※本記事でご紹介した治療は自由診療となります。効果や仕上がりには個人差があり、注射・注入や医療機器による治療では、腫れ・内出血などの副作用やダウンタイムが生じる場合があります。使用する薬剤・機器によっては未承認のものが含まれる場合もあるため、詳しくは各クリニックのカウンセリングでご確認ください。
美容医療相談室では、今回のような学会やイベントの様子も引き続きお届けしていきます。